右下の親知らずですが、真横にはえています。お口の中では一部分だけみえています。この状態ですと歯を磨くことが困難で、虫歯になったり、歯ぐきに炎症がおき、腫れて痛みがでるということがあります。
最初に

親知らず、特に下顎の親知らずですが、抜歯する際に注意しなくてはいけない事があります。それは、下歯槽神経です。
下歯槽神経とは、下顎の奥歯の根っこの先端付近にある神経で、親知らずの根の先端にはかなり近くなります。接している場合もあれば、根が神経を囲っていることもあります。そう言った場合、親知らずを抜く際に下歯槽神経に触れてしまい、損傷してしまうことがあります。そうしますと、麻痺が起こってしまいます。
麻痺とは歯科で麻酔をした時と同じように、ぼやーんとして、触っても感覚がないという症状になります。ではこの神経損傷はなぜ起きてしまうのか、そして防ぐにはどうしたらいいのかを、説明していきます。
下歯槽神経とは

下歯槽神経とは下顎の奥歯の根の先端付近を走行している神経になります。どんな神経なのかというと、オトガイ下部と顎下部の皮膚の知覚を支配しています。要は、下顎の触覚です。
触られている感覚がない場合は下歯槽神経を損傷してしまっている可能性がたかくなります。
麻痺が起きてしまう原因

麻痺は下歯槽管神経の損傷で起きてしまうと説明しました。ではなぜ損傷してしまうのでしょうか。
それは、歯の根の先が下歯槽神経と接している場合、歯を抜く際に根の先でこすって損傷する場合もありますし、歯を割って抜く際に、神経も切れてしまって損傷するということが原因になります。
そのため当院では、2次元のレントゲンで親知らずと下歯槽神経の位置が近い場合は、3次元のレントゲンである、CTを撮影します。それによって、親知らずと下歯槽神経の位置関係をしっかりと把握し、また、根の形もみて、いきます。そうすることで、抜歯をする前から抜くためのシュミレーションをしておくことができますので、手術時間の短縮にもつながります。
麻痺が起きたら

抜歯の翌日、当院では傷口のチェックと消毒に来ていただきます。その際に、まだ麻酔が効いているような感覚があれば、麻痺の可能性が高いです。
当院ではその可能性があれば、神経の回復に効く、ビタミン剤を処方させていただきます。また、すぐさま大学病院をご紹介しますので、そちらの麻酔科やペインクリニックにて神経の治療を行っていただくことになります。
麻痺の治療方法

麻痺の回復、つまり感覚回復、違和感、疼痛のための治療としては、大学病院の歯科麻酔科、口腔外科、ペインクリニック科などで、星状神経節ブロック、理学療法、薬物療法などの治療を受けることになります。
それでも回復しないものもありますが、その場合には経過観察となるか、一部の施設でのみ行われている外科的治療を受けることになります。
歯科治療による下歯槽神経・舌神経損傷の診断とその治療に関するガイドラインについては下記ボタンからご確認くださいませ。
ガイドライン麻痺の起こりにくい当院の
親知らず抜歯方法

そのため、抜くことをお勧めしていますが、レントゲン写真で、下歯槽神経と親知らずが近接していることが確認できます。

CTの画像です。下歯槽神経と親知らずはほんの少し接触していることがわかります。そのため、この親知らずは2回に分けて抜いていくことにしました。1回目は歯の頭の部分だけを切るだけになります。2回目は1−3ヶ月経ってから行います。
1回目で頭の部分を取ったスペースに歯が伸びてきますので、下歯槽神経と離れたかどうかを再びCTで確認して、残りの根の部分を抜いていく方法になります。

1回目から3ヶ月経ってからCTを撮影したものです。下歯槽神経の位置が根の先端から離れているのが確認できます。これで下歯槽神経を損傷させることなく、親知らずの抜歯を行うことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。麻痺が起きてしまうと、最悪ずっと残ってしまうこともあります。麻痺を防ぐためにはいかにして麻痺が起こらない、リスクの低い治療を行えるかが大事になってきます。
当院では口腔外科も標榜していますので、他院で抜けない親知らずも抜けるドクターが揃っています。またドクターの腕だけに頼るのではなく、CTも院内にございますので、親知らずと下歯槽神経の位置関係などもしっかり確認することができます。
もちろん当院でも抜けないもの、リスクの高い親知らずもございますが、まずは一度当院で親知らずを抜くのを検討してみてはいかがでしょうか。
親知らずの抜歯 親知らず、顎の痛み